注目される米の機能性を探る
[目的]
日本の主食用米の消費量は、1960年頃をピークに、ほぼ一貫して減少傾向にあり、平成30年度ではピーク時の半分以下となっている。一方、最近の調査では、若い世代は意外と米の消費に抵抗がないが、中高齢世代は米の消費を控える方が多いことが分かり、このような動向を踏まえ、健康に関心のある中高齢世代に向けて米の機能性についてもっと情報発信していく必要である。
このため、健康に関心のある中高齢世代に向けて米の機能性について訴求するため、玄米の健康効果に関する情報を発信する。
食事の欧米化、低糖質ダイエットの流行などに伴い、米の消費量は減る一方だ。しかし、その栄養価や機能性の高さが近年改めて注目されるようになってきた。日本の主食として日本人の健康を支えてきたことが最新の研究によって明らかにされている。
肥満症や糖尿病の改善効果も
米はさまざまな機能性成分を含んでいる。たとえば、整腸作用の期待できる食物繊維、抗酸化作用のあるフィチン酸などがそうだ。主食としてよく食べる食材だけに、機能性の効果の発揮もより期待できる。
糖質制限ダイエットの実践者から米は“食べると太る”と目の敵にされがちだ。しかし、そんな思い込みを覆す効果が明らかになった機能性成分がある。γ(ガンマ)-オリザノール。脳機能を活性化させることで動物性脂肪への依存から脱却させ、糖尿病や肥満症の改善に役立つと分かった。動物性脂肪を習慣的に過剰摂取してしまう「満足できない脳」を「足るを知る脳」に変えることができるという(※1)。
ストレス低減期待できるGABA多い米も
機能性の高い米もさまざま登場している。従来からある赤米や黒米といった有色米は、表面の糠(ヌカ)層に濃い色素が集積しており、抗酸化作用のあるポリフェノールを多く含む。
アミロース含有率の高い高アミロース米は、食後の血糖値上昇が通常の品種よりも少ないことが明らかになっている。ただし、粘りが少なくパサパサしており、日本人好みではないという欠点があるため、食味を改善する研究も進んできた。
巨大胚芽米は、胚芽の大きさが通常の品種の2、3倍あり、ビタミンB1やビタミンE、GABA(γ-アミノ酪酸)が豊富に含まれる。GABAは睡眠の質を高めたり、ストレスを低減したりする効果がある。
コロナ禍による健康志向の高まりで、機能性をうたう米の需要は高まっている。育種や商品開発が進むことで、米の新たな需要が生み出されていくはずだ。
※1 Hiroaki Masuzaki,Chisayo Kozuka,Masato Yonamine,Michio Shimabukuro“Brown rice-specific γ-oryzanol-based novel approach toward lifestyle-related dysfunction of brain and impaired glucose metabolism” Glycative Stress Research 2017; 4(1)
メディカルライスはコメの機能性成分を数量的に定義して病気の予防や治療に用いようというもので「治未病」を大きな目的としている。現在、予防効果や治療に併用する効果が認められるコメに、①有機玄米(肥満、糖尿病、高血圧に)②低GI米(糖尿病に)③低たんぱく米(腎臓病、透析減少に)④高GABA米、γオリザノール米(認知症や精神機能保持に)⑤抗酸化機能米(がん予防、動脈硬化予防に)が開発されている。また、表面加工により食べやすくした玄米や低蛋白加工玄米も新たに開発されている。メディカルライス協会はコメの生産、加工、消費者、研究者を結集し、規格の標準化やエビデンスを基盤として疾病予防や食事療法への適用を図ることを目指している。
我が国は超高齢者社会となり、糖尿病や認知症などの増加が予想されることから、医療や薬品の進歩に加えて、「食による健康の維持増進」も期待されている。玄米は白米に比べて、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養機能成分が豊富であり、健康の維持増進にも役立つ。また最近、色素米(抗酸化性成分が豊富)、巨大胚芽米(高血圧予防、血糖値上昇抑制)、高アミロース米(肥満、糖尿病の予防)、超硬質米(低吸油性、血糖値上昇抑制)、黒米・超硬質米(糖尿病・認知症複合予防)などの機能性が期待される各種の新形質米が育成されつつある。
玄米食による健康の維持増進と未病の健康復帰に資するため、長期安定、低菌数の玄米粉の開発により、パン、麺への利用に適したミックス粉の利用性の向上が進んでいる。また、玄米の酢酸発酵法と新規調味料開発や玄米のマイクロ波処理による玄米の無菌化、虫の除去、酵素失活、玄米臭の低減などの開発も行われている。
高機能玄米協会では、